精密板金加工を主要事業に掲げるゼンキンメタルでは、幅広い業種のクライアント様のご要望にフレキシブルにお応えし、ご満足いただける品質の製品を納めさせていただけるよう、日々技術研鑽を重ねています。
そんな私たちが培った技術力を形で示す一つの手段として、例年金属加工製品を社内で製作し、西日本の大規模な展示会「関西機械要素技術展」に出展しています。
今回は、2017年秋の出展の際に製作した「ステンレス製神社」の製作チームの中で中心的役割を担った、取締役生産部長の植田、技術・品質管理課長の洞ノ上、曲げ課係長の板垣の3名に、製作時の秘話について聞いてみました。
(左から、製作の中心メンバーである板垣・植田・洞ノ上)
Q.「ステンレス製の神社」を作ることになったきっかけを教えてください。
「関西機械要素技術展」の場では毎回、当社の技術力をアピールするための金属加工品を展示しているのですが、そのような場ではお客様との契約上、実際に納品している製品をお見せすることはできないので、代わりにこのようなオブジェを製作するのが通例となっています。
この神社を作る数年前、同じ展示会への出展用に「ステンレス製ヤマタノオロチ」の製作をやっていまして。当社工場のあるここ雲南市には、出雲神話のヤマタノオロチ伝説が伝わる土地がたくさんありますからね。今回はその流れで、このあたりにはたくさんの有名な神社があることから、「ステンレス製の神社」を作ろう、という話になりました。
(2015年度の出展作品 ステンレス製ヤマタノオロチ)
Q.製作チームのメンバーと、それぞれの役割を教えてください。
総勢8名のチームで制作を進めましたが、中心となったのは私と洞ノ上と板垣の3名です。洞ノ上は設計担当、板垣は溶接担当、私は仕上げの研磨作業などを担当しました。製作メンバー以外にも、展示会出展のための準備や手配をやってくれる事務方の女性メンバーも2名いました。
―8名も関わったのですね。設計は何をもとに製図したのですか?
神社に見に行って撮影した写真のみ…ですね。
―え!写真を見ただけで図面を引いたのですか?
はい。そうするしかないんで(笑)。
―それはなかなか大変ですね。特定の角度から写されただけの1枚の写真から、立体構造物の図面を引くという。
ええ、だいたいにそういう仕事ですから。設計は。
―確かにそうですね。しかし見事な出来栄えです。どのくらいの制作期間がかかりましたか?
5月の連休明けに着手して、10月の展示会本番直前までやってましたから・・・5カ月くらいですか。ただずっと作っていたわけではなく、業務の合間を縫っての作業なので、実質丸1カ月程度ですかね。1日1~2時間の作業で少しずつ進める感じでした。
―製作する上で苦労した点はどのようなところでしたか?
鳥居の上の部分や、屋根の曲線部分ですね。この微妙なカーブの再現がかなり難しく、何度か作り直しました。
―本当ですね。限りなく直線に近いけれど、少しだけ曲がっていますね。
はい、この絶妙なカーブを忠実に再現するのに苦労しました。それに屋根だけでも5つのパーツに分かれていて、すべて溶接でつなぎ合わせているので、かなり細かい作業になりました。
―溶接で?つなぎ目が全然見えないんですけど・・・
そうです、そこが我々の技術の見せ所です。まるで1枚のつながった金属の板に見えるんですけど、実は全部溶接してます。
―見事ですね。そのつもりで見ても・・・やっぱりつなぎ目が分かりません。
今回ステンレス材を使って作ったんですが、ステンレスは普通の鉄よりもさらに加工が難しいんですよ。溶接すると黒く焼け跡が残るので、仕上げ作業でそれを磨き上げて消す必要があります。鉄は後から塗装でごまかすこともできるけど、ステンレスは塗装しないので。それに、ステンレスは錆びないので、何年経ってもきれいな見た目が保たれるというメリットもあります。
―敢えて難しい材料を選ぶことで、技術力アピールにつながるわけですね。他にも苦労した点はありますか?
漢字の文字を掘った箇所があるのですが、これは単に表面の材料を文字の形でくりぬいただけではなくて、中にもう7~8枚のステンレス板を入れて、全部の板を同じ文字でくりぬいています。しかも、奥に行くに従って次第に小さくなるように。
―なんだかすごい技ですね。かなり精細な作業ではなかったですか。
はい、ここの加工は大変でした。他にも鳥居の上に掘ったゼンキンメタルのロゴマークとか、細かい加工が必要な箇所が多かったですね。
―みなさんで長い時間をかけて苦労して完成させた大作なのですね。完成品の満足度はどのくらいでしょう?
60点くらいかな。本当はもっとこだわって作りたい箇所がいくつもあったんですけど、何せ時間との戦いで。これを作る時間を捻出しながらの作業だったから、最後は時間が足りなくて妥協せざるを得なかったんですよ。悔しいですけど。
―そうでしたか。十分な出来栄えに見えますが。
いやいや、例えばこの本殿の格子の部分とか、扉がちゃんと開くようにしたかったんですよ。でも間に合わないから油性マジックで取っ手を書いちゃったんです(笑)。金属加工は、小さなパーツであればあるほど、難しくなりますからね。
―この神社にも相当細かいパーツがいくつも使われていますね。皆さん製作、大変お疲れ様でした。
―次回金属で何か作るとしたら、どのようなものに挑戦したいですか?
そうですね、やはり我々の腕の見せ所は「精密さ」「溶接技術のレベルの高さ」あたりになるので、次回は松江城とか作ってみたいですね。地元のPRにもつながりますし。あとは本業の話になりますが、早く自社製品を生み出したいという想いもずっと持っています。
―最後に、皆さんの「ものづくり」におけるこだわりをお聞かせください。
「何事も楽しみながらやる」、がポリシーです。仕事も楽しみながら取り組む方が技術の習得も早いと思っていますので、難しいことにもどんどん挑戦していきたいです。
私が担当した「展開」という作業は、金属加工の一番最初の工程になります。なので、後工程の人が作業しやすくするためにはどうすればよいか、ということを念頭において展開図を作成するのが私なりのこだわりです。
やはり、恥ずかしくないものを作りたいと常に思っていますね。今後もさらなる技術力向上を目指して、他社には作れないものを作っていきたいです。
―ありがとうございました。
ゼンキンメタルのものづくりに対するこだわりは、お客様のご依頼に基づいて製作する製品ひとつひとつに込められています。
現状に満足することなく、更なる高みを目指して。
ゼンキンメタルはこれからも、技術力の向上とお客様満足度の向上を目指して走り続けます。